作家とファンのためのウェブマガジン

Artist Notes

〈インタビュー〉筆かふぇに込めた想い – ゆうこさんと過ごす「ありのまま」の時間

スマホやパソコン、タブレットなど、電子機器にあふれた現代だからこそ、大切にしたい時間がそこには流れている。墨の香り、筆と紙がこすれる音、あたたかいお茶。アナログなひとときを五感で味わえる場所が中目黒にある。『筆かふぇ』を2024年に開業したゆうこさん。Webデザイナー、コーチング、筆かふぇ運営を行う彼女のテーマは「ありのままの自分で生きる」。

ーーー記事は広告下に続きますーーー

主軸になっているのは「心の声を聞く」こと

−Webデザイナー、コーチング、筆かふぇと、さまざまなことをやられていますが、まずはWebデザイナーについての話を伺いたいと思います。もともとはWebデザインの関係で働かれていたのですか?

それが、全然違う仕事だったんです。2021年に仕事を辞めて、コーチングで開業しようって思った時に、自分のWebサイトを作ったのがきっかけです。小学生くらいの時にサイトを作った経験があったので、自分でやってみようかなと思いまして。

−あの時期、サイト作るのすごく流行りましたよね!私も作っていました。

HTMLとか貼り付けてやりましたよね!それで、思い立ったはいいものの、当時とは作り方が全然違ったので、本などを参考にしながら作りました。それを見た友人から、ホームページ制作を依頼されたことがきっかけで、「人様に作るなら独学ではいかん…」と思い、プロから学び直しました。

−独学でのスタートだったんですね。自分のサイト以外のサイトを作るってまた感覚が違いますよね。

お客さまの商品やサービスにはどんな想いが詰まっているのかを聞いて、文章にして、形にして、っていう作業がコーチング的で好きですね。ホームページを作ること自体というよりも、その方の仕事に対する想いだったり価値観が聞けるのがすごく楽しいです。

−なるほど。コーチングにもつながっている。ところで、コーチングってどんなことするんですか?

その方と対話しながら、一緒に問題解決・目標達成をしていきます。カウンセリングがマイナスから0に戻る作業だとしたら、コーチングは0から1にしたり、10から100にしたりっていう作業ですかね。私がクライアントの場合は、「生きててもつまんないんですけど」みたいな悩みだったんですけど、それをコーチと話しながら整理していく作業ですね。

−へぇ〜!話すことで心の整理をしてもらうといったイメージですかね。

そうですそうです。私はこれまで自己啓発本とか偉人の言葉、みたいなものをたくさん読んできたのですが、コーチングのいいところは答えを出すのが「自分」というところです。他人であるコーチではなく、自分から出た答えなので、誰のせいにもできないという厳しさはあるのですが、そういう点が好きですね。

−ご自身でコーチングを受けたのがはじまりなんですね。

私はこれまで自分の軸がなく生きてきた部分があったんですが、コーチングを受けることで、自分がどう生きたいかをわかってないと幸せを感じられないんだな、とわかりました。それと同時に私もクライアントさんにコーチングしてみたいと思って養成講座を受けて独立しました。「ありのままの自分で生きる」をテーマにしています。

−コーチング…おもしろそう…!

先生が「あなたはこうすべきだよ」って教えてくれるわけじゃなく、自分から出てくるっていうのがおもしろいですよね。

−インスタに筆文字を載せていらっしゃいますが、こちらはどういう経緯で?

小学生のころ習字を習っていた、というのもそうなのですが、もともと絵や文字を書くことが好きで。書道家の武田双雲さんの生き方がコーチング的で気になって、本を読み始めたこともあって、自分も筆文字書いてみようと書き始めたのがきっかけです。

−Webデザインのデジタルから筆文字のアナログの対比がちょっと面白いです。

デジタルデトックスの意味もありますね。デジタルが効率的なのに比べて、筆文字ってすごく時間かかるしある意味非効率なんですけど、頭がクリアになっていく感じがするんです。筆を触って、紙を触って、墨の香りがして…そういうめんどくさくて非効率な時間が、大切な時間だなって感じています。身体と心に集中できる時間ですね。

−ゆうこさんは一貫して心との対話に重点を置いていらっしゃるんですね。

ーーー記事は広告下に続きますーーー

2024年、筆かふぇ開業

−カフェって聞くと、各々好きなことをして各々が違う方向をみている空間だと思うのですが、『筆かふぇ』って目的が「筆でなにか書く」って場所だから統一感があるというか、「カフェ」としては珍しい空間ですよね。

そうかもしれないです。「しがらみ」みたいなものもない空間ですね。手ぶらで習字とお茶が楽しめて、すっきりして帰ってもらう。家でやるにはめんどうな習字道具も揃えなくていいし、片付けは私がやるし、純粋に直感と身体を使うことに集中できる場所だと思っています。

−道具にもこだわりがあるんですか?

ビンテージものが好きで、道具や茶器もビンテージものを集めています。お客さまには好きなものを選んでもらっています。

−道具選べるの楽しいですね!ちなみに、墨って液体と固形どっちが人気とかあります?

液体と固形だと割と半々の人気ですね。「筆かふぇに来たから固形で書くぞ!」って方もいらっしゃいますし、やっぱり手軽に書きたいということで液体を選ばれる方もいます。でも実は一番人気は「水書き」なんです。特殊な紙の上に水で書くと色が浮き出てくるんですけど、服も手も汚れないから人気で。

−水書き!なんだか意外です!せっかくだし、ってことでみなさん固形擦ってらっしゃるのかと思いました。いただけるお茶ってゆうこさんのチョイスなんでしょうか。

そうですね、オーガニックだったり薬草っぽいものだったり、健康に良さそうなお茶を選んでいただいた急須に淹れてお出しします。お湯はお代わりも受け付けてます。

−墨の香りとお茶の香りで癒されそう…。同じことを同じ空間でやる、ということで、隣同士になったはじめましての方の交流もあったりしそうですね。

ありますね!はじめまして同士の方でお話する方もいますし、友人やご家族といらっしゃって過ごされる方もいます。

−では、しーんとしているというよりは、和気あいあいとしていそうですね。楽しそう。

お客さまによりますね。しーんとしている回もあります。その回ごとにお客さまの感じが似ていたりするのも、偶然なのですがおもしろいところです。「あ、今日は静かな感じだ」「今日は和気あいあいと楽しむ人が多いな」とか。

−どうして「筆かふぇ」を開業されたんでしょうか。

コーチングからの流れもありますが、「自分に向き合う時間」を持ってほしいな、と。私が習字を教えるわけでもなく、正解がない場所でスマホを置いて、自分が自分のために過ごす時間を提供したかったからです。あとは、古民家カフェにずっと憧れていて。今のお店に出会った時に「ここならやりたかったことできる!」と思いました。明日死ぬなら何がしたいかって考えた時にカフェだな、と思ったこともあって、やってみようと。

−「自分に向き合う時間」いいですね。メンテナンスというか。筆かふぇをどんな場所にしていきたいですか?

しがらみのない場所、ありのままの自分で付き合う場所。肩書きなしで「自分」として人と関われる場所だと思っています。自分の社会的な立場や役割、肩書きとかは全部置いておいて、ありのままで過ごせる場所にしていきたいです。

−開催は月に2回で定員が5名ということは、要予約ですね。

そうですね。私がお客さまとお話したいというのがあって、5名でも時間が足りないくらいなんですが。(笑) 開催は、もともと満月の日と新月の日にやりたかったんですけど、曜日が決まってないと借りれなかったので、満月、新月近くの火曜日に開催しています。人が作った時間じゃない、自然の時間で、「あ、今日満月だから筆かふぇの日だ」みたいな。そんな感じでやりたかった名残です。

ーーー記事は広告下に続きますーーー

「ありのまま」のあなたのために

−ゆうこさん、週5でお着物着てらっしゃるんですよね。今もお着物お召しですが、いつからお着物生活を?

2023年の秋です。スタートとしては、下着を身につけない生活がしたい、と思ったところからで。江戸時代って今みたいな下着って身につけていなかったはずだよなと思って。もともと環境問題に興味があったこともあり、電気や石油を使わなかった江戸時代ってどんな生活してたんだろう、とか、江戸時代の衣食住について考えているうちに、新品の洋服を買わずにリサイクル着物を着てみようかな、と思い立ちました。

−もともとお持ちだったお着物からはじめたんでしょうか。

最初の一着は楽天で買いました。そのあと、実家に着物で生活していることを話したら、ちょこちょこと着物が送られてくるようになって、今ではすっかり衣装持ちになりました。(笑) 私、これまで自分に似合う服ってよくわからなくて。顔が薄いので何を着てもしっくりこなかったんですが、着物を着たら「めっちゃ似合うじゃん!」って思えたんです。保育園の送り迎えも着物で行っています。最初はどう思われるか不安でしたが、コーチングで培った「私がやりたいことが大事」という気持ちで。今ではもう慣れました。

−ゆうこさんが考える自分の理想像ってどんな感じか聞きたいです。

理想は「その日やりたいことをやる人」です。
いま、Webデザイナーと、コーチング、筆かふぇの3足のわらじを履いている状態なんですけど、じゃあどれか一つに絞ろう!みたいな気持ちはあまりないんですよね。どれも好きでやっているから、Webデザインやる時はWebデザインやって、コーチングも筆かふぇも、その時その時でやりたいと思ったことをやりたいですね。

−すごくわかります!その日やりたいことをやる人、理想です!!

一個だけに絞ると疲れちゃうんですよね。なら、別に絞らなくていいかって思ってます。

−自分の中の波ってありますよね。その波にはあらがってもしょうがないと言うか、乗るしかない!って感じることがあります。

波ありますね。なにするにしても、気分が乗らないと時間かかるのに、乗ってると「あれ?30分で終わったぞ?」ってなる時とか。

−ありますね〜。ということは、今後の目標は…

「その日やりたいことをやる」ですね。(笑) やりたいことをやるとはいえ、今やっている3本の柱は、これからも続けていくだろうなと思います。そして、この3つに共通していることは「ありのままの相手の想いを大切にする手段」であることなんです。Webデザインは、仕事への想いを形にするし、コーチングは想いや心の整理をして未来を決めるお手伝い、筆かふぇはありのままの自分で自分や人と向き合える場所。これからも「ありのまま」でいるお手伝いをしていきたいですね。


名前:ゆうこ
出身地:神奈川県
活動地:東京都
作品ジャンル:筆文字
使用画材:墨汁、絵の具
SNS:ゆうこさんのInstagram / 筆かふぇのInstagram
公式サイト:じぶん生活

経歴
2013年、大学卒業後、総合電機メーカーに就職。
2021年、夫の転勤やコロナをきっかけに独立。
今まで、自分に嘘をついて生きていた経験から、「ありのままの自分で生きる」をテーマにコーチング、Web制作、筆かふぇで活動中。

コメント

この記事へのコメントはありません。

RELATED

PAGE TOP