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Artist Notes

〈倉持智行さん〉義手で書や絵画を生み出す作家 – 隔たりのない社会へ

力強い書や繊細な絵画を制作している倉持さん。作品自体が持つ素晴らしさはもちろんのこと、義手で描いていることも彼の生み出す作品を語る上で外せない。利き手を失うという悲痛な経験をしてもなお、諦めなかった彼の想いが詰まった作品に、心打たれる人が数多くいるのだ。

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事故がきっかけで踏み出したアートへの道

月明かりに照らされて幻想的に浮かび上がる夜桜とまだ雪の残る富士。
浮かび上がるような臨場感と息を呑む美しい色彩が目を引く『THIS is JAPAN』は、多くの人の心をつかみ、DAISOのカレンダーや企業の社内カタログ、宮内庁御用達の老舗漆器専門店・山田平安堂の小箱などのデザインに採用されている。

倉持さんが絵画を描き始めたのは、2015年に事故で利き手を失ってからだった。
義手になってから開始した創作活動だが、最初は絵ではなく、書道からアートの道に踏み込んだそうだ。

「書道を習いたいと思っていた矢先に怪我をしてしまったのですが、どうしても”利き手”で書道をしたい!という強い意志があり、書道からはじめました。」

入院中に義手の書道家・Chang-Woo Seok 石敞宇さんについて取り上げた記事に出会い、勇気をもらった倉持さんは、自らも書道を始める決意をした。
そして、たくさんの人との出会いから、絵画にも興味を持ち、活動の幅を広げた。

「はじめて話しますが、実は子供の頃、画家になることが夢でした。」

利き手を失うということを、ただ悲痛な出来事として終わらせなかった彼の「諦めない心」が、子供の頃の夢までも叶えたのだった。
翌年2016年には、文部科学省後援毛筆検定3級を義手で合格し、絵画においてもさまざまな公募展で入選や賞を受賞するなど、彼に秘められていたアートの才能は一気に開花した。

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創作活動は、終わりのない旅

倉持さんの作品の変容はインスタグラムで追うことができるが、初期の頃は書道や墨絵の作品が多く、着彩画も水彩の美しい透明感を活かした絵画がメインだ。
そして、平成から令和に変わる頃、アクリル絵の具との出会いを経て、現在の繊細ながらもダイナミックな作風に変化している。
すでに評価されている作風がありながらも、さらに新しい画材を取り入れて新たな作風に挑戦していったのだ。
倉持さんは、創作活動についてこう語る。

「絵を描いていると面白くなってきて、自然と勉強することで納得のいく絵にたどり着きます。たどり着いてもまた理想ができていって、いつまでも旅をしているような感覚で、完成形はないような気がします。」

旅をする感覚で、その時その時の作品に合った作風を探り、新たな出会いに感動し、それを絵に反映する。
まるで絵自体が成長を求めているかのように生み出されていく、その作業が、人々に感動と驚きを与える理由なのかもしれない。

「絵は、最初からうまくは描けませんでした。始めた時に理想を高く持ちすぎると、途中でくじけてしまうので作成の過程を楽しみしたながら、足りない部分を補いステップアップしやり続けるというのが大切だと思います。矛盾するかもしれませんが、目標がないと行き先がないのでもちろん設定しています。」

思い描いた理想は必ずしも達成できるとは限らないが、自分でコツコツと定めていく目標には到達していくことができる。
着実に、そして誠実に、誰かの心に響くなにかを届けたいという想いから、歩みを続ける倉持さんの人柄が垣間見える言葉のように感じる。

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現在作成中の絵も、今までの作風と少し変わったカラフルな色合いが特徴だ。
モチーフも風景ではなくデザイン的に構成された人物画だ。

「以前はどちらかというと暗いイメージの色あいの作品が多かったのですが、徐々に明るく、ポップな色合いを使うようになってきました。 現在制作の作品は それ以上にカラフルな作品で、たくさんの方に勇気と元気を与えられるようなものにしています。」

この新作は、12月にSTORIES TOKYOで開催されるグループ展に出展される。

また、11月に赤坂サカスで開催されるTBSテレビのイベント企画「地球を笑顔にする広場」で、近隣の小学生たちとワークショップを行うほか、11月中旬に倉持さんの地元茨城県坂東市で市民参加型の展示会に出展予定だ。
2023年もまだまだ彼の作品を生で見る機会が多くある。
そして、作品はもちろんだが、倉持さんの喋りやすくあたたかい人柄にもぜひ触れてほしい。

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誰でも自由に活動できるのがアート

常に変化しながら創作活動を楽しんでいる倉持さん。そんな彼に今後の展望を聞いてみた。

「まずは、作品のレベルアップをしていきたいです。義手で絵を描いているという驚きよりも、作品を見て感動してもらえるように。」

何で描いているか、どのように描いているかではなく、ただ純粋に作品としての感動や想いを届けることに力を入れていきたいと語っている。
その想いが日々の試行錯誤や挑戦につながっていっているのだろう。
作品を見て何かを感じ取ってほしい、その気持ちは描き手がどういう状況であるかは関係なく、アーティストが共通して持っているものだと思う。

「今まで、自分に細かい作業は無理だと制限をかけていた部分がありました。これからは、制限をかけずにチャレンジしていき、展示活動を続けることで、健常者と障がい者の隔たりのないアート活動を発信していきたいです。 また、SDGSの活動も引き続き力を入れていきます。」

創作活動に障がいのあるなしは関係ない。
作りたい、届けたいものを自由に表現できる社会であるべきだと感じる。
アートに隔たりはない。誰もが自由に表現していいんだ。そんなメッセージを、倉持さんはこれからも創作活動を通して伝えていく。

「“Only One”であることを誇りに思える活動をしていきたいです。」


Profile

名前:倉持智行

出身地:茨城県

活動地:全国

作品ジャンル:義手による具象画(風景画、動物画、人物画)、書道、抽象画(Pop、ファンタジー)

SNS:TwitterInstagramYouTube:検索は「義手で書道

使用画材:アクリル画、水彩画、墨、パステル、Pen、Digital、Spray

経歴

2015年に事故に遭い、義手で絵を描き始めました。

2016年
2月 茨城県笠間稲荷神社 絵馬展 笠間稲荷神社会長賞展示
文部科学省後援毛筆検定3級を義手で合格

2017年
2月 茨城県笠間稲荷神社 絵馬展 ペンテル社長賞展示
10月 群馬県富弘美術館 詩画の公募展に出展 入選展示(展示は2018年)
10月 2018年ファミリ-マート年賀状採用

2018年
東京都美術館 新極美展23回 入選展示

2019年
東京都美術館 新極美展24回 新人賞展示
現代動画展 入選展示

2020年 金沢エムザ百貨店 騒ぐイマジネーション「障がいのある作家展」展示
SHIBUYA TSUTAYAにて「KURAMOCHITOMOYUKI Solo Exhibition」(原画展示、グッズ販売、ライブペイン      トを開催)
京王百貨店新宿店の障がい者アート展にて展示販売
DAISOカレンダー採用
TSUTAYA坂東店にて作品展示

2021年
市川 暖簾「KUGURU展」入選展示
AEON22店舗 パラリンアートTシャツ販売
パラリンアートSOMPOアートカップ入選
プロラボフォールディングス 書き下ろし原画
名古屋松阪店「I am ME」障害者アート展展示
山田平安堂漆器小箱デザイン採用
HIROKOBISのワンピースドレスデザイン
NEW YORKポストカード展にて展示販売
Luxembourg Art Prize 芸術功労賞
「フクロウじいさんとベル子ちゃん」イラスト作成
国立新美術館 構造展 ホルベイン賞展示

2022年
水戸市社会福祉協議会「なくした先に夢がある」 講演、作品展示

2023年
茨城県坂東市 広報誌「ばんどう」1月号 表紙作成
新宿NSビル「義手オンラインミーティング」 スピーチ、作品展示
TBS「地球を笑顔にする広場」イベント参加
株主総会用限定グッズイラスト作成
STORIES TOKYO神楽坂 「超絶展」展示
他 東京、茨城、栃木、名古屋、福岡、千葉、石川での展示 個展や都内での展示
茨城新聞、東京新聞などでの掲載と作品紹介
「365ART +magazine」(世界21ヵ国)掲載
「Art Journal 」【通巻 100号記念】掲載

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